
子宮・卵巣の腫瘍
子宮・卵巣の腫瘍
子宮や卵巣にできる腫瘍は多岐にわたり、女性の健康に大きく関わります。子宮には、子宮筋腫、子宮腺筋症、子宮頸管ポリープ、子宮内膜ポリープ、子宮頸がん、子宮体がんなど、良性から悪性までさまざまな疾患があります。一方、卵巣には、子宮内膜症によるチョコレート嚢腫をはじめとした、卵巣嚢腫(良性腫瘍)、境界悪性腫瘍、そして卵巣がんなどが見られます。卵巣の病気もまた、初期にはほとんど自覚症状がなく、症状が出たときにはすでに進行しているケースも少なくありません。これらの病気は初期には無症状のことが多く、人間ドックや健診で偶然見つかることが多いのが現状です。不正出血やお腹の張り、下腹部の違和感などの症状が出て初めて気づかれることもあります。特に注意したいのが、家族に子宮や卵巣の病気の既往がある方や、今後の妊娠・出産を考えている方です。病気によっては、将来的な妊娠に影響する可能性もあるため、早めの検査・相談が重要です。当院では早期発見早期治療の窓口として、スクリーニング検査のち必要に応じて他院での画像診断(CT/MRI)や、十分な説明ののちに高次施設へ紹介させていただきます。
子宮筋腫
子宮の筋肉細胞からできるコブのような形の良性の腫瘍です。実は、30歳以上の女性の3人に1人はあると言われ、婦人科の病気の中ではよくある病気の一つです。
卵巣から分泌される女性ホルモンによって、腫瘍が大きくなることがあります。年々月経痛がひどくなっている、経血量が多くなり貧血を指摘されるようになった、下腹部が出てきた、腰痛や頻尿の症状があるときは子宮筋腫が原因かもしれません。妊娠を考えている方では、不妊症や流産・早産の原因になることもあります。早期発見と早期治療のためにも、受診をお勧めします。症状が軽く腫瘍が小さい場合、経過観察となります。症状が強く、腫瘍が大きい場合は、薬物療法や手術による治療を行います。
子宮内膜症/子宮腺筋症
本来、子宮の内側にあるべき子宮内膜またはそれに似た組織が何らかの原因で、子宮の内側以外の場所で発生してしまうのが子宮内膜症です。子宮内膜組織が子宮筋層にできたものは「子宮腺筋症」と言います。特に卵巣にできたものを「チョコレート嚢腫」と言うこともあります。月経がある若い年代に発症する病気で、主に20~40歳代に多いと言われています。放置すると不妊症の原因や、将来的には卵巣がんに進展することもあります。治療は薬物療法と手術療法があり、症状の種類や重症度はもちろん、年齢や妊娠の希望などを総合的に判断して最適な治療法を選択していきます。薬物療法には、LEP、ジェノゲスト、GnRHアナログなどのホルモン製剤や、ミレーナなどがあり、経血量を減少させ、月経痛を緩和します。
子宮頸管ポリープ/子宮内膜ポリープ
子宮頸管ポリープは、子宮の入口にできる良性の腫瘍で、ほとんどの場合は無症状ですが、不正出血の原因となることがあります。形や大きさにもよりますが、外来で簡単に切除することが可能です。一方、子宮内膜ポリープは子宮の内側(子宮内膜)にできるポリープで、不妊の原因になることがあります。受精卵の着床を妨げるため、妊娠を希望される方には特に注意が必要です。治療が必要と判断された場合は、ポリープの切除を行います。方法としては、子宮内膜を掻爬して取り除く「子宮内膜掻爬術」や、カメラで確認しながら正確に切除する「子宮鏡下手術」があります。いずれも多くは良性ですが、症状のある場合や妊娠を考えている方は、早めの受診をおすすめします。当院では、診断から治療まで丁寧にサポートいたします。
子宮頸がん
子宮頸がんは、子宮の入口(子宮頸部)にできるがんで、ヒトパピローマウイルス(HPV)の感染が主な原因とされています。HPVは主に性的接触によって感染し、多くの人が一生に一度は感染するといわれていますが、ほとんどは自然に排除されます。しかし、持続的な感染によりがんへと進行することがあります。初期には自覚症状がほとんどなく、進行すると不正出血やおりものの増加、月経期間の延長などの症状が現れます。近年では、20〜30代の若い女性に増加傾向があり、30代後半が発症のピークとされています。早期発見が可能ながんであり、婦人科の診察で比較的発見されやすいのも特徴です。症状がなくても、20歳を過ぎたら子宮頸がん検診を受けましょう。HPVワクチンを接種した方も、定期的な検診がとても大切です。
子宮体がん
子宮体がんは、子宮体部(胎児を育てる場所)にできるがんで、50〜60歳代に発症のピークがあります。女性ホルモン(エストロゲン)の影響や、肥満、未産婦がリスク要因とされています。最も多く見られる症状は不正出血で、特に閉経後に少量の出血が長く続く場合は注意が必要です。月経がすでに終わっているにもかかわらず出血がある場合は、早めに婦人科を受診し、子宮体がんの検査を受けることが大切です。治療の中心は手術で、進行の程度により異なります。放射線治療やホルモン療法、化学療法を併用することもあります。子宮体がんは、病巣が子宮内にとどまっている早期の段階で治療を開始すれば、80%以上の方が治癒するといわれています。そのため、早期発見・早期治療が非常に重要です。
卵巣腫瘍
子宮の左右にある卵巣にできる腫瘍のことを指し、良性・悪性(がん)・境界悪性(良性と悪性の中間的な性質)の3つに分類されます。卵巣は骨盤の奥に位置し、初期には症状がほとんど現れないため、気づかないうちに大きくなることがあります。腫瘍の存在は超音波検査で確認することが可能で、腫瘍の大きさや内部の状態から、良性か悪性かの予測もある程度行うことができます。ただし、確定診断にはより詳細な情報が必要なため、MRI検査を行うことが一般的です。そして、最終的には手術によって摘出された組織を病理検査し、確定診断に至ります。良性腫瘍の多くは経過観察が可能ですが、悪性または境界悪性が疑われる場合や、腫瘍が大きい場合は手術による切除が推奨されます。また、腫瘍がねじれて激しい腹痛を起こす「茎捻転」などの緊急性の高いケースもあるため、注意が必要です。
卵巣がん
卵巣がんは、子宮の両脇にある卵巣に発生するがんです。卵巣がんは、その発生する場所によって上皮性・胚細胞性・性索間質性などの種類がありますが、90%以上が上皮性のがんです。また、悪性度が比較的低く、境界悪性腫瘍と呼ばれる卵巣がんも存在します。
年齢別にみた卵巣がんの罹患率は、40歳代から増加し、50~60歳代がピークですが、卵巣がんの死亡率は、50歳以降増加して高齢になるほど高くなります。
卵巣がんができても、ほとんど自覚症状はありませんが、症状としては、下腹部にしこりを触れる、圧迫感がある、膀胱が圧迫されて尿が近くなるなどの症状があって受診することが多いのですが、このようなときは既にがんが進行していることも少なくないのです。
そのため、経腟超音波での定期的な「卵巣がん検診」が早期発見に重要です
TOP